疾患について

当科で治療を行う疾患

呼吸器外科では以下の疾患のような、肺や縦隔の腫瘍をはじめとした胸部の疾患に対して手術を中心とした診療を行っております。
ご高齢の患者さんに対しても、個々の状況に応じて低侵襲な手術を積極的に行い、根治を目指しております。

1. 原発性肺がん

原発性肺がん(いわゆる“肺がん”)は、他の臓器のがんと比べて死亡数が非常に高いです(男性:第1位,女性:第2位)。肺がんは他臓器に転移をしやすく、進行した状態で発見されることも少なくありません。しかし、検診などにより早期に発見されれば、手術加療による治癒を目指すことができます。また局所進行肺がんに対しても、薬物治療や放射線治療と手術を併用した集学的治療を行うことにより、根治も期待されるようになってきました。

2. 転移性肺腫瘍

大腸がん、頭頸部がん、腎がん、乳がん、子宮がん、骨軟部肉腫などの他臓器のがんが肺に転移した転移性肺腫瘍に対して、主診療科と適応を充分に検討した上で手術を行っております。
転移性肺腫瘍に対しては、原発性肺がんと同じように肺切除を行うことで腫瘍を摘出しますが、症例に応じて肺部分切除や肺区域切除など、肺切除の容量をできるだけ小さくすることで、患者さんの負担を軽減できるように手術を行っております。手術アプローチとしても、胸腔鏡下手術、ロボット手術、開胸手術の中から、患者さんに最適なものを選択しております。

3. 縦隔腫瘍

“縦隔”は胸部の中央に位置しており、心臓や大動脈、気管、食道などの重要な臓器により構成されています。これらの重要な臓器に隣接して腫瘍が発生することがあり、それらを縦隔腫瘍と言います。
縦隔腫瘍は良性のものがほとんどですが、解剖学的に生命に重要な位置であり手術が第一選択です。まれに悪性の種々の癌やリンパ腫などもあり、術前に画像診断や、必要に応じて組織生検を行うことで、手術などの治療方針を決定します。代表的なものに胸腺腫や胸腺がんなどがあります。
当院では、縦隔腫瘍に対してロボット手術を積極的に行っており、腫瘍の位置や大きさなどに応じて手術方法を決めています。

4. 気胸

肺のどこかに穴が開くことで、肺の中の空気が胸腔内(肺の外側)に漏れて 肺がしぼんだ状態を気胸と言います。
肺の表面にできるブラという弱い箇所が破裂して起こる“自然気胸”や、肺気腫などにより肺が弱くなり破けてしまう“続発性気胸”などがあります。
気胸が進行すると、肺がしぼむだけでなく、心臓に負担がかかり致命的になることもあります。手術を中心に、呼吸器内科と連携して治療を行います。肺からの空気漏れが続く場合や再発を繰り返す場合、左右両方で気胸を発症している場合などは手術適応となります。

5. 膿胸

胸腔内(胸壁と肺との間)に感染を引き起こして膿瘍(うみ)が溜まっている状態です。初期治療としては、溜まった膿瘍を体外に出すために胸腔内へドレーン(管) を挿入し、抗生剤治療を行いますが、これらの内科的治療で治癒困難な状況であれば、手術加療を行う必要があります。できるだけ早期の手術加療が有効で、早期であれば胸腔鏡を用いた低侵襲な手術で治療が可能になります。

6. 感染性肺疾患

非結核性抗酸菌症や肺アスペルギルス症など内科的治療に抵抗性のある肺病変に対して手術を行います。病状によっては内視鏡手術やロボット手術で切除します。

7. その他

上記以外にも以下のような疾患に対して、幅広く対応させていただいております。

  • 未診断の肺腫瘍 :気管支鏡検査による腫瘍の診断が難しく、画像所見から肺がんを疑うような肺腫瘍に対して手術を行います。胸腔鏡手術などにより腫瘍を切除して診断と治療を同時に行うことができます(診断によっては追加治療が必要になることもあります)。
  • 胸壁腫瘍(骨肉腫,軟骨肉腫,孤立性線維性胸膜腫瘍など) :肋骨や胸骨から発生した腫瘍に対し、手術を行っています。胸壁が大きく欠損した場合は人工物を用いて胸壁を再建することがあります。
  • 多汗症 :異常な量の汗をかく状態を言います。重症の多汗症に対しては、胸部交感神経をブロックする交感神経遮断術を施行する場合があります。手術適応については慎重に判断します。
  • 漏斗胸 :胸の真ん中が凹んだ形状になる病気です。胸の凹みの程度が強い場合は、肺や心臓を圧迫して肺活量の低下、運動時の息切れ・呼吸困難感、胸痛、不整脈などの症状を引き起こすことがあります。これらの症状を認める場合や、外見上の観点から強い希望がある場合は、手術を施行します。術式はNuss法が一般的です。
  • 肺移植の相談 :岡山大学病院 呼吸器外科と連携し、肺移植治療の紹介および移植後の経過観察を行っています。