肺がんについて

原発性肺がん

原発性肺がん(いわゆる“肺がん”)は、他の臓器のがんと比べて死亡数が非常に高いです(男性:第1位,女性:第2位)。肺がんは他臓器に転移をしやすく、進行した状態で発見されることも少なくありません。しかし、検診などにより早期に発見されれば、手術加療による治癒を目指すことができます。また局所進行肺がんに対しても、薬物治療や放射線治療と手術を併用した集学的治療を行うことにより、根治も期待されるようになってきました。

手術アプローチ

肺がんに対する手術の主なアプローチ方法は以下の3つになります。腫瘍の大きさや場所,進行度などにより、手術方法を決定しております。

肺がんに対する手術の主なアプローチ方法 イメージ図
  1. 開胸手術 :10cm以上の皮膚切開により開胸を行い、手術を行います。大きな腫瘍や進行肺がんなどに対しては開胸手術が必要になる可能性があります。
  2. 胸腔鏡下手術 :胸腔鏡(カメラ)を用いて3cm以下の皮膚切開×3箇所の創で行います。早期肺癌や一部の進行肺がんに対して行います。開胸手術よりも傷が小さく、術後の痛みが軽くなります。近年の呼吸器外科手術における主なアプローチ方法になります。
  3. ロボット手術 :1cm程度の皮膚切開×5箇所の創で行います。ロボットのアームを用いた胸腔鏡下手術であり、従来の胸腔鏡下手術と比較して繊細な操作に優れています。島根県で唯一のロボット手術による肺切除を行っております。

縮小手術

肺がんの病期(ステージ)や腫瘍の位置に応じて、根治性を担保しながら肺切除量を縮小する縮小手術を積極的に行っております。

肺切除量を縮小する縮小手術 イメージ図
  1. 肺葉切除 :肺がんに対する標準的な術式になります。進行肺がんでは基本的に肺葉切除を選択します。
  2. 区域切除 :早期肺がんでは、肺葉よりもさらに小さい“区域”で切除できることがあります。切除肺の量を減らすことにより、患者さんの体への負担や合併症を減らすことができます。
  3. 部分切除 :区域切除よりもさらに小さい範囲で肺の切除を行います。すりガラス影を示す肺がんのような、極早期の肺がんでは部分切除で根治を得られることがあります。

拡大手術・集学的治療など

局所進行肺がん(リンパ節転移や隣接臓器への浸潤などがある肺がん)に対しても、拡大手術や集学的治療を積極的に行っております。

拡大手術では、適応を充分に判断した上で、隣接臓器を含めた合併切除や、血管形成術・気管支形成術を実施しています。

集学的治療とは、手術療法・薬物療法(免疫療法を含む)・放射線療法を手術に組み合わせることで、呼吸器内科や放射線治療科と連携して、治療困難な局所進行肺がんの治療に臨んでいます。 薬物療法においては、従来の殺細胞性抗がん剤だけでなく、一部の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬も術前導入療法・術後補助化学療法に適応が拡大されましたので、がん細胞のEGFRやALKなどのドライバー遺伝子異常やPD-L1タンパク発現を調べることで薬剤を適切に選択し、肺がんの根治を目指しています。